慶野仁希さん JIA修士設計展受賞しました!

建築

12 Mar 2026

慶野仁希さん JIA修士設計展受賞しました!

2026年03月12日に開催された「第24回JIA大学院修士設計展2026」審査会(審査員:妹島和世)において、修士2年生の慶野仁希(Instagram↗︎)が優秀賞を受賞しました。

【作品概要】

Before, After Cognition
Hitoki Keino
2025
Video, Photo, Novel, Model, Box Model, Installation, Short film, 6min 18sec

祖父母の家で体験した、夜間に外部から差し込んだ〈ある光〉は、事件として特定できるものではなく、主体や行為の意図を欠いたまま記憶に残存している。この体験は反復的に想起されることで、親しみのある家を次第に「全体を捉えることのできないもの」へと変質させていった。本研究は、フロイトの「不気味なもの」の概念を理論的基盤とし、抑圧されたものが偶然や反復を契機に回帰する現象を、恐怖としてではなく、向けられるべき対象の定まらない不安として捉える。そしてその感覚を、精神分析として内面に回収するのではなく、幼少期に祖父母の家で体験した説明不可能な出来事をアブダクションによって構成されたフィクショナルな家として外在化し、現実世界へ問い返すことを試みる。さらに、マーク・フィッシャーのいう「不在の失敗/現前の失敗」の概念を参照し、認識以前(Before)と認識以後(After)の状態を意図的に生成する。その操作は、ファウンドフッテージ的な映像における現実と虚構の狭間の揺らぎを表現する。そこから仮説形成的推論(アブダクション)によって設計された〈Abduction House〉は、予測不可能なプロパビリティを内包しながら、確定しえない出来事の気配を視覚表象として空間化する。このフィクショナルな家は、存在しないにもかかわらず、私たちが当然視している「現実」そのものが、知覚と記憶の編成によって成立していることを可視化させる。かつて 18 世紀ピラネージの幻想建築がそうであったように、私たちの知覚や記憶が構築する建築の姿は、単なる物理的な実体以上の意味を持ち得るのである。

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