10月の雨と12月の風
16 Sep 2026
展覧会情報:
展覧会名:「10月の雨と12月の風」
出展者:奥川司/川村幸輝/川村彩良/菊池凌楽/清田幹翔/後藤健太/露木美杏/細野開友
会場:多摩美術大学八王子キャンパスア―トテークギャラリー201・202
会期:2026年10月15日(木)〜2026年10月28日(水)
開館時間:10時〜17時
休館日:日曜日
入場料:無料
主催・企画:STUDIO YUASA(多摩美術大学大学院 美術研究科 デザイン専攻 建築・環境デザイン研究領域 湯浅良介研究室)
キュレーション:湯浅良介
宣伝美術:川村幸輝
HP:https://tilta.tamabi.ac.jp/studios/ryosuke-yuasa-studio
Instagram:@studioyuasa
展覧会趣旨文:
「Much rain in October, much wind in December(10月に雨が多い年は、12月に強い風が吹く)」。展覧会タイトル「10月の雨と12月の風」は、欧米に古くから伝わる天気の言い伝えから名付けています。10月に降った雨と12月に吹く風は、それぞれ別の時に起こる自然現象です。そのあいだに目の前で確かめられる単純な因果関係があるわけではありません。それでも人は、自然を観察し、経験を重ね、離れた出来事のあいだに何らかの連なりを見いだしてきました。別々に存在するものを一つの言葉のなかに置くことで、それまで見えていなかった関係が見えてくることがあります。この言い伝えには、私たちが世界をどのように見て、それをどのように表すのかという二つの働きが含まれています。
湯浅良介研究室では、空間にまつわる「美学と表象」をテーマに、空間が私たちにどのように現れ、経験されるのか、また、その経験をどのように表すことができるのかを考えています。見る、聞く、触れる、歩くといった感覚や行為によって、同じ場所でもその捉え方は変わります。表象もまた、すでにある空間を図面や写真、模型などに置き換えて表すことだけではありません。何を見て、どこを切り取り、どのような像や形式として表すのかによって、空間の見え方も変わります。空間を経験することと、それを表すことは、このように互いに作用し合っています。
本展は、研究室に所属する8名それぞれの研究テーマに基づいた8つの作品から構成されます。箱、CG、写真、映像、紐、梱包材、柱、傘、椅子、鏡、映写機、展示台など、異なる性質をもつものが扱われ、そこに、覗く、観る、通る、座る、映す、前進する、キャプチャーするといった行為が加わります。覗き込むことで現実とフィクションの区別が揺らぎ、通過することで、それまで意識されなかった境界や領域が現れる。覆うことで見えなくなったものが、かえってその存在を示すこともあれば、鏡に映る像や椅子に座る行為によって、見る側と見られる側の位置が入れ替わることもあります。映像を映す装置そのものが動き、変形し、鑑賞者の行為が別の媒体を経由して現れる作品もあります。
これらの作品では、ものの意味や状態が、それだけで決まるわけではありません。同じものでも、見る位置や順序、周囲にあるもの、そこに加わる行為によって、その現れ方は変わります。「あるようでない/ないようである」「ここであってここでない」といった、一見すると矛盾する状態が同時に成立することもあります。一つのものが、他のものとの関係によって異なる見え方や意味をもつ。その複数の状態を、ここでは空間の多義性として捉えています。
8つの作品が同じ会場に置かれると、作品同士のあいだにもさまざまな関係が現れます。ある作品越しに別の作品が見え、移動すると二つの像が重なり、先ほど見たものの記憶が次に見る作品に重なる。反対に、隣り合っていても何の関係もないものや、関係しているように見えても実際には別々のものもあります。何を先に見たか、どこに立ったか、どちらを向いたかによって、それらは結びついたり、離れたりします。
空間は、もの同士が認知可能な状態として関係することで初めて生まれるものではなく、私たちのまわりにすでにあるものとして考えてみます。そのなかに人やもの、光や時間があり(または生じ)、それぞれが関係したり、関係しなかったりしています。建築もまた、それだけで完結するのではなく、そうした周囲との関係によって異なる状態をとります。ものを見ることと表すこと、関係づけることと関係づけないこと。どちらかに定めるのではなく、複数の状態が同時に存在する空間について、8つの作品から考えます。